俺が初めて好きになったヤツは、あろうことか男だった。 ふつーに考えて、ソレがおかしいつーのもわかってるけどな。 まあ、好きになっちまったんだから、仕方ねーと思う事にしてる。 しょっ…、しょーがねーだろっ?! 俺だって…何でアイツじゃなきゃ、って思うんだからよー…。 『器用で不器用な彼。』 「ね、ゼフェル☆ 明日はどうする? どっか行こうか?』 「…あー、明日は俺、地下にこもんねーとな…」 「え゙っ?! 何よ、そんな事聞いてないよ?!」 「あー、別に言ってねーしな、俺も」 「ちょっと、どういう事?」 「どういう…って、大体おめーが言ったんじゃねーか!!」 「は? 何を?」 「あのな…。おめーが『びがんき』ってのを俺に直してくれって、昨日半べそかいて泣きついてきたんだろ?!」 「びがんき…?? ああ…、美顔器のコト?」 「思ったよりアレ、結構やっかいなんだよ…。あーいう機械は俺、あんま見た事ねーしな」 「ま、そりゃそうでしょ。アンタがアレに精通してても何か変だしねえ…」 「つーかよ、あんなん…ホントに意味あんのか?」 「ま、失礼しちゃうねえ。私のお肌がこんなにキレイなのも、アレのおかげなんだよ?」 「…余計嘘くせー」 「何よ、私の美肌には興味ない?」 「っ…!! あのな、そんな事今話してねーだろ!!」 「ふふ☆ 照れちゃって…可愛いよねえ、ホント」 「揶揄うなよ!!」 「ね、アレはいつでもいいからさ、明日は2人で過ごそうよ? 折角の休日なんだからさ」 「…ダメだ」 「ええ?! 何でよ?!」 「後もう少しなんだよ、アレ。また時間置くと色々面倒だし、やれる時にやっておかねーと…」 「何? じゃあ、私と一緒に居なくてもいい訳だ、ゼフェルは?!」 「っ…!!」 んな事、言ってねーじゃんか…。 「そっか…。一緒に居たいと思ってたのは、私だけだったみたいだね?」 「………」 「イイよ、他の誰かを誘って…。ああ、エンジュにデートに誘われてたから、今からでも…」 「なっ…?!」 「どうしたの?」 「何で…そーなるんだよ…?!」 「何でって…。ゼフェルってば、恋人になってからも相変わらず私に冷たいし?  今日みたいに、ホントにゼフェルに愛されてるのかなって思ったりもするし?」 「っ…!!」 「エッチはまださせてくれないし、もう色んな意味で私、欲求不満なんだよねえ…」 「よっ…?!」 「アンタも男なら、わかるでしょ? 好きなコを目の前にして、いつまでも我慢出来るモンじゃないって?」 「しっ、知るかっ!!」 「何で? もしかしてゼフェル…私に欲情しないの…??」 「んがっ?!」 よっ…、欲情って…。 さっきから欲求不満だの、なんつー事言いやがんだ、コイツはっ!! 「あ〜あ、がっかりだよねえ…」 「だ、だから、誰がそんな話をしてるんだよ!!」 「…違うの?」 「…知るかっつーの。大体俺、好きんなったのって…おめーが初めて、だし…」 「…え?」  「そ、それに…おめーのだから、早く直してやろーと思ってんじゃねーか…」 「ゼ、ゼフェル?」 「っ、何でもねーよ!! それに…俺様に直せねーモノはねーって所、見せておかねーとな!!」 「………」 「な、何だよ、その顔…」 何だよ…ずりーだろーが。 そんな嬉しそーな顔、すんなよ…。 つーかよ…。 今の、聴こえてたのか…?! 「ホント…素直じゃないよねえ?」 「なっ?!」 「アンタがそういう気持ちでいてくれている事なんか、とっくにわかってるよ。で、も、ね?」 「………」 「私が居ちゃ、出来ないの?」 「…はあ?」 「私はアンタと一緒に居たいんだよ。それはいつも、何度も言ってるでしょ?」 「………」 「ゼフェルが私の事を1番に考えてくれているように、私もゼフェルとの時間が1番大切なんだよ?」 「べ、別に俺は…」 「大体アンタはそうでなくても恥ずかしがりなんだし、私達ってちょっと恋人同士の甘い時間ってモノが 足らなさ過ぎなんだよねえ…」 「なっ…、おめーなー!!」 「アンタが一つの事に夢中になっちゃう性格も、勿論大好きだよ? でも、さ? 私の事も、忘れないで欲しいんだよ」 「わ…忘れてなんか、いねーだろ…」 「…そうかな?」 「オイ…!!」 「ふふ…☆ じゃあ、たまにはこの可愛い口から、私を好きだって聴かせてくれる?」 「!!」 「私はもうアンタが居なくちゃ、生きて行けないからね」 「ばっ!! はっ…恥ずかしーヤツだな…!!」 「どうして? あ…ゼフェルは、私が居なくても平気?」 「ちがっ…!!」 「んっふっふ〜☆ …続き、は?」 「!!」 やられた…。 何でいつもこーなるんだ?! いつだってコイツの思う通りの流れに持って行かれちまうんだよ…。 「ホラ、早く言わないと、襲っちゃうよ?」 「な…?!」 「…言いたく、ない?」 なっ…。 だから、そんな顔すんなって…。 クソっ…こんなこっ恥ずかしー事、俺が言えるかよ!! 「…俺も…だよ…」 「ん? 何が?」 「っ…、だから俺もっ…おめーと…一緒だっつっってんだよっ!!」 「そ…っか☆ …ありがと、ゼフェル。ね、顔、上げて…?」 「あ?」 「ホラ、じっとして…」 「んっ…?!」 いとも簡単に、俺は上を向かされ、キスされていた。 …コイツとのキスは、キライじゃない。 つーか…。 恥ずかしいやら、何やらで…俺の心臓がパンクすんじゃねーかって位、ドキドキする。 コイツに聴こえちまうんじゃねーかって、毎回焦る。 俺だけが振り回されてるみてーで、何か納得いかねーよなー…? 「…ご馳走様☆」 「な…?!」 「ま、期待してた言葉じゃなくてちょっと物足りないけど、勘弁してアゲル☆」 「ちょっ…?! オイ、待てっ…!!」 「何?」 「…何で、俺の服、脱がすんだよ?!」 「何でって…どうして訊くの?」 「何でって?! つか、当然だろ?!」 「そんな事言われても、コッチも当然なんだけどねえ? そんなの、ゼフェルとエッチするために決まってるじゃないの♪」 「エッ…?!」 「ゴメンね、ゼフェルがあんまり可愛いから。もう堪んなくなっちゃった☆」 「このっ…!!『堪んなくなっちゃった☆』じゃねーっつーの!!」 「だって…ホラ、聴いてごらん?」 「え…?」 頭上から降ってきた声は、いつもとは違う、真剣な声だった。 驚いて俺の身体から力が抜けた瞬間。 掌でそっと俺の頭は胸元に寄せられ、耳を丁度心臓の辺りにぴったりとくっつけられた。 「…わかる? 私の鼓動の音」 「っ…」 確かにその音は、俺の心臓の速さと同じ位に、ドキドキと鼓動していた。 「信じられる? このオリヴィエ様とあろう者が、ゼフェルと一緒にいるだけでこんなにドキドキしちゃうんだよ?」 「…!!」 「私とそういう事するのは、イヤ…?」 「!!」 「あ、それとも…攻めの方がイイ?」 「な…な…?!」 「ん〜…早くしないと、全部脱がしちゃうけどイイの?」 「っ…!!べ…別に…俺は、おめーとなら…」 「!!」 俺の言葉に目を見張った次の瞬間、コイツはすげーキレイな顔で、本当に嬉しそうに笑ったんだ。 俺の考えてる事なんて、いつもコイツにはお見通しだから。 俺よりも年上で、大人だと思ってたから…。 でも、俺がちゃんと言わないせいで、コイツも不安になるんだって知らなかったんだ。 俺と同じで、相手にドキドキするなんて、知らなかったんだよ…。 頭のどっかでコイツには敵わない、と思ってたんだよな。 だけど。 コイツを不安にさせるのも、あんな笑顔を見せるのも、俺だけだと思ったら、ちょっといいかもな…。 『愛してるよ、ゼフェル』 …俺はまだそれには慣れないけど、コイツの口から紡がれる言葉で、胸がぎゅっと苦しくなる。 いつか俺も、言えればいいなとは…思うけど、な…。 いつかって、いつだって? んなもん、いつかはいつかだろ。 …ま、どーしてもってんなら、考えてやるよ? ***** 「ああ、無理じゃない?」 「はあ?!」 「だって、キスしただけで真っ赤になっちゃうんだもん。エッチの時は死んじゃうんじゃないかって心配したよ、ホント」 「!!」 「でも、イイよ。無理しなくても」 「無理って…何だよ、ソレ!!」 「言って欲しいのはホントだけど、ソレを言っちゃあゼフェルじゃなくなっちゃうような気もするじゃない?」 「おめーな…」 「ふふ…冗談だってば☆」 「ったくよー…」 「身体は正直だからね、今はソレで十分だよ☆」 「!!」 「気持ち、良かったでしょ?」 「バっ…!!」 「そ? なら良かった☆」 「まだ何も言ってねー!!」 「あら? 私、ヘタだった?」 「っ…!! だからおめーは…っ!!」 「ハイハイ、イイから静かにしてよ。全く、ムードもへったくれもないじゃないのさ…」 「………」 つーかよ…。 俺、弄られまくってるよな…? コイツにはやっぱり敵わねー。 でも、俺はそれでも、コイツじゃなくちゃダメらしい。 ま、アレだ。 気が向いたら、『いつか』、言ってやるよ。 …なあ、オリヴィエ? あとがき: うえ〜〜〜〜〜ん!! ごめんなさい〜〜〜〜!!!!! やっぱり豆田の脳みそではコレで限界(涙)!! 折角翠憐さまより素敵な萌えお題を頂いたと言うのに、予想通りつーか、予定通りと言うか… メタメタになってしまいました…(涙)。 本当は余裕かましているオリヴィエも、ゼフェルの愛情表現の少なさにヘコんでいたんです。 素直じゃない恋人の事は手に取るように理解してはいても、ソレはソレ、コレはコレで不安にならない訳がない、と。 結局愛しいゼフェルの口からは『好き』と言わせる事は出来ませんでしたが(苦笑)一生かけて言わせてみせる、 とオリヴィエは目論んでいる筈です(笑)。 それにもうひとつ。 気付いた方、いらっさいますでしょうか? ゼフェルは最後の最後でしか、オリヴィエの名前を呼んでないんです(笑)。 しかも、面と向かってではなく、心の中でだけ。 恋人と意識してしまった途端、急に呼べなくなってしまったんですね〜♪ 可愛いよな〜…(殴打)。 え〜、ところで。 何故にお相手が夢様だったのかと言いますと。 一番効果的に鋼様を弄ることが出来るのは、彼しか居ないだろうと(笑)。 あちこちで彼はゼフェルを弄り倒していますからね〜、そのイメージが強いんですよ。 あ、そうそう。 因みに夢様、攻めでございます(苦笑)。 こんな夢鋼、どうよ…。 どうなのよ…(汗)。 翠憐さま、こんなメタメタな話で大変申し訳ありませんでしたm(_ _)m 読みたいと言って下さったお心の広さに感謝致します…(涙)。 ココまで読んで下さって、ありがとうございましたm(_ _)m。 06/11/20微妙に加筆修正(苦笑)。 ☆back☆☆小説部屋トップへ☆/☆トップページへ☆